台川

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台川

宮沢賢治

 

〔もうでかけましょう。〕たしかに光がうごいてみんな立ちあがる。こしをおろしたみじかい草。かげろうか何かゆれている。かげろうじゃない。網膜もうまくかんじただけのその光だ。
〔さあでかけましょう。行きたい人だけ。〕まだ来ないものは仕方しかたない。さっきからもう二十分もったんだ。もっともこのみちばたの青いいろの寄宿舎きしゅくしゃはゆっくりしてさわやかでよかったが。
これからまたここへ一遍いっぺん帰って十一時にはむこうの宿やどへつかなければいけないんだ。「何処どごさ行ぐのす。」そうだ、釜淵かまぶちまで行くというのを知らないものもあるんだな。〔釜淵まで、一寸ちょっと三十分ばかり。〕

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